SkyDriveとMUFGが西日本でeVTOL商用化を検証、事業化の壁をどう越えるか
ニュースの概要
空飛ぶクルマを開発するSkyDriveが、三菱UFJ銀行を含む関西の企業と組み、西日本でeVTOL(電動垂直離着陸機)を商用運航するための実現可能性調査を始めた。航空、金融、エネルギーなど業種の異なる企業が集まり、機体の運航、資金の集め方、離着陸場などの設備、保険、環境への配慮といった課題を一緒に検証する。単独の企業では解けない社会実装の壁を、共同で洗い出すのが狙いだ。大阪・関西万博をきっかけに関西では空飛ぶクルマへの期待が高まっており、万博後の継続的な事業につなげられるかが問われている。
引用元: SkyDrive、MUFGなどと西日本でeVTOL商用運航の実現可能性を検討(Urban Air Mobility News)
分析・見解
機体開発から「運航の仕組みづくり」へ軸足が移った
これまでのeVTOLの話題は、機体の性能や型式証明(=国が安全性を認める手続き)が中心だった。今回の取り組みは、機体ができた後に何が必要かを具体的に問うている点で一段階進んでいる。
飛行機の歴史を振り返ると、機体が飛べることと、旅客を毎日安全に運べることの間には大きな距離があった。整備、乗務員の養成、運航管理、保険、空港設備がそろって初めて事業になる。eVTOLも同じ道をたどる。
銀行が参加する意味は「お金の出し方」を設計できること
注目すべきは、メガバンクの三菱UFJ銀行が入っていることだ。eVTOLの機体は1機あたり数億円から十数億円とされ、事業者が自前で買い揃えるのは重い負担になる。リース(=借りて使う方式)や、複数社で出資する仕組みなど、資金面の設計が事業の成否を左右する。
航空機リースが世界で一つの産業になったように、新しい機体にも金融の型が必要になる。銀行が早い段階で関わると、将来の融資の審査基準づくりにも声を届けやすくなる。
保険とエネルギーは地味だが最大の難所である
保険会社にとって、事故の実績がない機体は料率(=保険料の算出根拠)を決めにくい。実績がなければ保険料は高くなり、運賃に跳ね返る。ここは実際に飛ばしてデータを積むほかなく、時間のかかる課題だ。
エネルギー面では、複数の機体が短時間で充電するための電力が要る。離着陸場に大きな電気設備を置くと、送電網の増強や再生可能エネルギーの調達も絡む。エネルギー企業が参加している理由はここにある。
西日本という舞台の強みと弱み
関西は観光地が多く、大阪、神戸、京都、関西空港が比較的近い。移動の時間を短縮できる価値が分かりやすい地域だ。一方、人口密集地では騒音と安全への住民の目が厳しくなる。米国のジョビーやアーチャーが都市部での運航計画に慎重な説明を重ねているのも、同じ理由による。
ビジネスへの影響
異業種が組む協議体は、参加すること自体に価値がある
こうした共同検討では、結論そのものよりも、決まっていく過程で業界のルールの下書きが作られる点が重要だ。たとえば、離着陸場の設置基準や保険の条件が議論の中で固まれば、後から参入する企業はそれを前提に動くことになる。
不動産、建設、観光、物流、電力といった企業は、自社の強みが運航の仕組みのどこに当てはまるかを今のうちに整理しておくとよい。早く関わった企業ほど、仕様や条件に意見を出しやすい。
収益の見込みは「観光」と「緊急」から立てる
通勤のような日常利用が広がるには時間がかかる。現実的には、景色を楽しむ観光飛行、島や離れた施設への移動、救急や災害時の輸送が先行するだろう。単価を高く設定できるうえ、利用者に安全の説明をしやすいためだ。
意思決定者は、万博のような一時的な需要に頼らず、観光客数や既存のヘリコプター市場の実績を土台に、需要を保守的に見積もる姿勢が求められる。
今すぐできる準備
大がかりな投資の前に、自治体の担当部署との接点を持つ、土地や屋上の活用可能性を調べる、社内で保険・法務・設備の担当をそろえて勉強会を開く、といった小さな一歩から始めたい。協議の場に呼ばれたときに、具体的な提案ができる状態をつくっておくことが差になる。